創業45年目 田山司法書士事務所



共有名義の不動産対策に家族信託を活用する



今回は、相続税対策だけではない家族信託の活用事例ケースをご紹介します。

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*共有名義で不動産をお持ちのAさんの場合*

Aさんは、お父様から相続で取得したAさん単独名義の収益不動産である建物を一棟お持ちです。

しかし、建物の敷地になっている土地は、
Aさん、長男のBさん、長女のCさんの3人で3分の1ずつの共有となっています。

Aさんは高齢であることから、もし自分が判断能力を失った場合に不動産を売却・管理するのが困難になるのではないかという不安がありました。



判断能力を失った場合とは
たとえば認知症に罹患しているといったご自身で法的な判断ができない場合などを指します。

共同で土地を所有しているBさんとCさんが不動産を売却したり、建物をリフォームして管理していこうと考えたりしても、Aさんの意思表示がないと何もできません。

この時、Aさんの代理となって法律行為を行う成年後見人を裁判所で選任する必要があります。
しかしその選任には、相当な時間と手間がかかります。

更に、成年後見人はこの件だけで選任されてもAさんが亡くなるまで続きます。
親族以外の専門職後見人が選任されると、報酬も発生します。
なにより、Aさんの希望していたようなことを成年後見人や裁判所が同意を出さない可能性もあります。

そこで、Aさんとしては、できれば不動産の塩漬けを防ぐために、今のうちに1人の名義に変更をしたほうがいいのではないか、
あるいは法人を設立して、その法人に売却した方がいいのではないか、と相談されました。


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家族信託の設計Aさんの財産状況から相続税が課税される心配はありませんでした。

しかし、問題は不動産がAさんのお父さんから相続した財産であったため、法人を設立して売却をすると譲渡所得税が多くかかる心配があります。


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そこで、私はこのような家族信託をお勧めしました。

  1. 委託者をAさん、長男のBさん、長女のCさんの3人、受託者を新設する法人D、受益者をAさん、Bさん、Cさんとします。
  2. お父さんであるAさんが亡くなった後は子供であるBさんとCさんが引き継ぎます。
  3. 最後に、不動産を売却してBさんとCさんが現金化して分けられる事まで予定します。


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このような家族信託を行うことで以下のようなメリットがありました。

  • 共有名義の問題を解消することができる。
  • 法人に売却するよりも、信託をする方が譲渡所得税や登記費用、登録免許税、不動産取得税を節税できる。
  • お父さんが亡くなるまで、そして亡くなった後に不動産を売却したい場合など、柔軟な資産設計を行うことが可能になる。



いかがだったでしょうか。
実際は家族信託を含め、様々な検討が必要になります。
それぞれの家族の事情や資産によって対処の仕方も変わります。
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当所では、随時相続の相談を実施しております。

ぜひ、ご活用ください。