節税対策5つのポイント

相続は、相続人になる人が届出や申告をしなくても、被相続人の死亡時点から自動的に開始されるものです。申告納付は、10か月以内にするのが原則ですが、この期間は長いようでいても、あっという間に過ぎてしまうものです。節税を考えるなら、早い段階で備えることが相続時のトラブルを防ぐためにも必要です。
下記にご紹介したものは、一般的に知られた節税対策ですが、誰にでも有効な答えとは限りません。個別の条件により適した対策は異なりますので、具体的な対応についてはご相談ください。

生前贈与をする

生前贈与とは、被相続人が死亡する前に、自分の財産を人に分け与える行為です。個人の財産は、各個人の意思により自由に処分できるのが原則です。
財産を自分の名義で持ち続けていれば、自分が死んだ時には、当然ながらそのまま相続税の課税対象になります。いずれ相続をするという意思があるのであれば、生前に手放せるものは手放した方が相続税は下がります。

子供や孫への生前贈与をして財産を減らしていく方法は、多くの方が対策として行われていることですが、特定の人に資産の大半を贈与してしまうことは、相続発生時の遺産分割の際に争いのもととなってしまう場合があるので、配慮も必要です。

また、相続が発生した時点から3年以内に贈与されたものは、相続税の対象となってしまいますので、生前贈与を考える場合には早めに対応することをおすすめします。


所有財産の評価額を下げる
土地や建物は、利用状況に応じて「財産評価基本通達」により評価減があります。

自己資金又は借金をして賃貸物件を建てれば、相続の際に土地の評価額も、建物の価額も低くなるので基本的には相続税が安くなります。

土地の評価が更地に比べて低くなります。更地の約8割の評価になります。
建物の価額は、固定資産の評価額がそのまま相続税の評価額となり、建築費の約6割にまで下がるといわれています。
小規模宅地等の特例が受けられる可能性があります。
土地を多く保有している方の典型的な節税方法といえます。所得税や固定資産税の節税にもつながります。
ただし、下記のようなデメリットもありますので、相続時の節税という観点だけでなく、将来にわたっての収益性など総合的に考える必要があります。

【 デメリット 】
賃貸物件建築後に空室が出てくると、見込んでいた収支に合わなくなり、資金繰りが苦しくなる可能性もあります。管理維持のための手間や費用といった負担もあります。
土地の上に建物が建ってしまうため、売買が難しくなったり、将来物納しようと思ったときに利用が難しくなったりするなどの可能性があります。
借入金によって建築した場合、返済についての対策が必要です。
返済可能な借金を作る
借入金の残額は、全額債務控除となるので、相続税を大きく減額する効果があります。

ポイント2でご紹介したように、借入金で更地に建物を建てると相続税対策としての効果が大きくなります。
ただし、すでにふれたように「相続時」の税金を安くするという効果です。借入金の額がその後の返済が可能なものであるか充分ご検討ください。

相続人を増やして税率区分を下げる
相続人を増やして、1人当たりの相続額を少なくする ⇒ より低い税率区分にあてはめる
これによって納税額が大きく減額します。

基礎控除額 = 5000万円 × 1000万円 × 法定相続人の数

そこで、「養子縁組制度」を活用し、法定相続人の数を増やします。

ただし、相続税法上は法定相続人の数に含めることができる養子の数は次のとおり制限があります。

実子がいるとき 養子と認められるのは1人 基礎控除額加算1000万円
実子がいないとき 養子と認められるのは2人まで 基礎控除額加算2000万円

この他にも、生命保険と退職金の非課税枠が増えることになります。(法定相続人一人500万円)

相続人が増えるということは、相続の「権利を持つ」人の数が増えることであり、また、養子縁組という形が、他の相続人の感情を害する可能性もあります。これらが争いにならないよう、遺産分割対策をしておくことが大切です。

納税資金として生命保険と自己株式を活用する
以上の節税対策を行っても、多額の納税資金が必要になる場合があります。
こうした場合、納税資金に充てる目的で、大口の生命保険に加入するのが一般的なケースです。
相続が発生した場合にすぐ現金で支払われるため、相続人の納税資金や、財産分割の資金に活用できます。保険の掛け金を支払うことで、相続財産を減らす効果もあります。
500万円×法定相続人の数が非課税になります。

会社経営者などは、会社の株式を活用する方法もあります。
ただし、業績がよく利益が出ている会社や土地などの不動産を保有している会社などは、その株式の評価額が高くなる場合があり、その高い株価に相続税が課税されてしまいます。
また、未上場会社などは、市場での売買ができません。
こうしたケースも、商法の改正により、株式を相続した遺族が、その会社の株式を会社に売却した資金で納税を行うということが可能になりました。