債務整理
・ 住宅ローンのある個人再生
・ 住宅ローンのある個人再生
- 個人再生の手続きを行うことには、マイホームを残したまま借金を整理することができるという大きなメリットがあります。このメリットを利用するには、個人再生を申し立てるときに、住宅資金特別条項という制度を利用する必要があります。
・住宅ローン再生が使えない場合
- 住宅ローン以外の担保権設定登記がされている場合は、住宅資金特別条項は使えません。消費者金融等の(根)抵当権設定登記がされている場合は、住宅資金特別条項は使えないことになります。
・事前協議
- 「再生債務者は、住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する場合には、あらかじめ、当該住宅資金特別条項によって権利の変更を受ける者と協議しなければならない。(規則)」となっています。
- そこで、住宅ローン再生を行う場合、必ず、住宅ローン会社と事前協議を行なうようにしています。事前協議とは、債務者の現状と、どのような再生計画で住宅ローンを返済をしていけばよいか等を、住宅ローン会社と事前に話し合うことです。
- しかしながら、事前協議については、住宅ローン会社によっていろいろあるようなので、これは住宅ローン会社の指示に従うようにしています。
・銀行口座との絡み
- 銀行から住宅資金を借り入れたら、月々の返済は、その銀行の口座引き落しとなるのが通常です。その銀行に、個人再生を行なうことを通知した場合、その時点で、口座を凍結する銀行もあります。また、当該口座が、クレジット会社への返済の引き落とし口座にもなっている場合あります。このような場合、住宅資金はそのまま支払い、クレジット会社への引き落としだけ止めてもらうよう、銀行と相談する必要があります。
・住宅ローンの弁済許可
- 再生手続が開始すると、再生債権者に対する弁済は禁止されます。これは、住宅ローンも同じでした。しかし、それによると、多額の遅延損害金が発生し、再生計画の履行可能性に影響を与え、住宅資金特別条項の利用を妨げる要因になるとの指摘がされておりました。
- そこで、法律が改正され、再生債務者は、期限の利益を喪失していない等、一定の要件を満たせば、再生手続開始決定後でも、裁判所の許可を得て住宅ローンを弁済することが可能となりました。
<要件>
- (1)再生債務者が再生手続開始後に住宅資金貸付債権の一部を弁済しなければ住宅資金貸付契約の定めにより、当該住宅貸付債権の全部または一部について期限の利益を喪失することとなる場合
- (2)住宅資金特別条項を定めた再生計画案の認可の見込みがある場合
- *(1) は、住宅ローンについて「期限の利益を喪失していないこと」となります。つまり、既に期限の利益を喪失している場合は、この弁済許可が受けられないことになります。
・住宅資金特別条項
- 住宅資金特別条項には、次の4つがあります。(また、法定はされておりませんが、「そのまま型」というものもあります。
- (1)期限の利益回復型
- 住宅ローンが期限の利益を喪失している場合は元の状態に戻し、住宅ローンの支払いを概ね原契約どおり継続していくもの。住宅ローンの延滞分やこれに関する遅延損害金等は、一般債務の返済期間内(3年~5年)に全額支払う必要があります。
- (2)弁済期延長型
- 住宅ローンの返済期間を最長10年間延長し(ただし、最終弁済期において再生債務者が70歳を超える延長はできない)、その期間内に住宅ローンと過去の延滞分等を全額支払うものです。
- (3)元本据置型
- 一般債務の返済期間内は住宅ローンの元本の一部を据え置き、元本の一部と利息のみを支払っていくものです。
- (4)同意型
- 住宅ローン債権者の同意がある場合は、「同意型(4項型)」として「期限の利益回復型(1項型)」、「返済期間延長型(2項型)」、「元本一部据置型(3項型)」に該当しない住宅資金特別条項を定めることも可能です。
- *(1~3)は住宅ローン会社の同意不要
・そのまま型
- 住宅ローンだけは遅滞なく支払っていて、期限の利益を喪失していないという場合は、住宅ローンの契約内容を変更する必要がなく、引き続きそのまま支払いを継続できます。但し、個人再生手続きが開始すると、全ての再生債権への弁済が禁止されるため、個人再生申立の際に、裁判所に「弁済許可の申立」をする必要があります。
- なお、「そのまま型」の再生計画案の記載様式は、「期限の利益回復型」をベースにします。
- 「そのまま型」の場合、再生計画によって権利変更はされません。ですが、再生計画案には、当初の契約どおり弁済していく旨を記載しなければなりません。記載しなければ、再生計画が不認可となるからです。
・住宅ローンと清算価値
- 住宅ローンがある場合は、その住宅の清算価値も考えなければなりません。
- 通常は、オーバーローン(住宅の査定額より住宅ローンの残高の方が多い)ですので、この場合は、清算価値はゼロとなりますが、一方、「住宅の査定額が住宅ローンの残高より多い」場合、その差額は清算価値となりますので、注意が必要です。